経営改善ブログ
[2026.10.17]
カテゴリー:経営
現代の企業経営において、製品やサービスを通じて直接的に収益を創出するフロントオフィスと対をなす形で、組織の基盤を後方から支えるバックオフィス(間接部門)の役割が極めて重要な意味を持っています。
このバックオフィスの中核を担うのが、「総務部門」と「経理部門」です。両者はともに「企業全体の利益に大きく貢献し、事業活動を円滑にする」という共通の目的を持つ間接部門ですが、その管理対象、アプローチ、求められる専門性、および時間的視野は根本的に異なります。また、コーポレート・ガバナンスや内部統制の観点からは、この両者の職務を適切に分離(職務分掌)しつつ、相互のプロセスを連携させることが、企業の不祥事や不正を防ぐ防波堤となります。
しかしながら、中小企業においては人的なリソースの関係で総務部門と経理部門が区別されず混在している状態がほとんどです。
今回のブログは、総務と経理はいかなる領域を分担しているのか、その構造的差異について述べたいと思います。
バックオフィスの適正比率は、一般的に全従業員の5%から25%程度が目安とされており、たとえば従業員数が10名から50名の企業であれば、2名から5名程度の専任人員を配置することが組織運営のバランスとして適正とされています。
経理と総務の最も本質的な役割の違いは、マネジメントの対象にあるとされています。
経理部門の管理対象は「企業の資金(カネ)」と、それにまつわる「取引データ」です。企業の事業活動に伴って発生するお金の流れを正確に記録し、経営状態を数値化することが最大のミッションです。。日々の現預金管理、仕訳入力、請求書の発行から、月次決算、年次決算、税務申告に至るまで、企業の活動を貨幣価値(帳簿)に換算して可視化する専門機関として機能しています。
一方、総務部門の管理対象は「企業の人材・物品・施設(ヒト・モノ・環境)」です。社員がそれぞれの業務に集中し、最大のパフォーマンスを発揮できるような物理的・制度的環境を構築・維持することが役割となります。具体的には、オフィスのファシリティ管理、備品の調達、社内規程の整備、防災・危機管理、福利厚生の運営、株主総会の企画・運営、さらには社内文書の保管・廃棄に至るまで、その対象は極めて多岐にわたります。
大企業では総務と経理が完全に独立した部署として機能していますが、人員に余裕のない中小企業においては、両者を兼任する「総務経理」というポジションが一般的です。
この兼任体制においては、総務の「広範な視野」と経理の「専門性」の両方を身につけることが求められます。専門性を持ちながら幅広い領域と連携できる人材は「T字型人材」と呼ばれ、バックオフィス全体を俯瞰できる貴重な存在となります。一方で、兼任体制は業務の極端な属人化を招きやすく、一人の担当者が多数の業務を抱え込む「何でも屋状態」に陥るリスクが高いです。月次決算の遅延や、担当者の突然の退職による業務停止(退職時BCPリスク)という深刻な経営課題の温床となり得るため、経営層はシステム化やアウトソーシングによる負荷分散を戦略的に行う必要があります。
当事務所では「T字型人材」の育成に関する様々なご支援をしておりますのでお気軽にご相談ください。
安部中小企業診断士事務所は、“100年続く企業”を応援しています。
[2026.9.12]
カテゴリー:経営改善
「利益が出ているのに倒産する会社」がある理由をご存じですか?
今回のブログは会社経営の土台となる「資金繰り」を取り上げます。
「黒字なのに倒産する」という黒字倒産は、決して特別なことではありません。利益が出ていても、手元資金が不足すれば会社は存続できないからです。
例えば、商品を販売すれば売上や利益は計上されます。しかし、代金の入金は数か月後ということも少なくありません。一方で、給与や仕入代金、外注費、家賃、借入金の返済は待ってくれません。
つまり、帳簿上は利益が出ていても、銀行口座に現金がなければ支払いができず、会社は立ち行かなくなってしまいます。
ここで重要なのは、「利益」と「現金」は全く別のものだということです。
利益は会計上の数字ですが、資金繰りは実際に会社が使える現金の流れを管理することです。
中小企業で資金繰りが悪化する原因としては、売上の急増による運転資金不足、利益率の低下、過剰在庫、設備投資の負担、借入金の返済など、さまざまな要因があります。
だからこそ、毎月の試算表だけでなく、「資金繰り表」を作成し、数か月先までのお金の動きを予測することが重要です。
資金繰り表は、会社の健康診断書とも言えます。
資金不足を早い段階で把握できれば、金融機関への相談や経費の見直し、売掛金回収の強化など、打てる手はいくつもあります。
また、金融機関との信頼関係も資金繰りには欠かせません。
資金が尽きる直前ではなく、余裕のある段階で相談し、試算表や資金繰り表をもとに現状や今後の見通しを説明できる会社は、金融機関からの評価も高くなります。
私どもがこれまで数多くの経営改善・事業再生を支援してきた経験から申し上げますと、資金繰りが安定しなければ、経営改善も、新規事業への挑戦も、人材への投資も進めることはできません。
資金繰りは、会社経営の「土台」です。
まずは、「利益を見る経営」だけではなく、「現金の流れを見る経営=CF経営」へ発想を切り替えることが、強い会社づくりの第一歩になります。是非、日頃から資金繰り予定表の作成をしていただきたいと思います。
安部中小企業診断士事務所は、“100年続く企業”を応援しています。
[2026.8.29]
カテゴリー:経営改善
経営改善計画を策定しバンクミーティングで銀行の同意を得て借入金のリスケや返済金額を減らすことができると、社長だけでなく、我々支援者も一安心してしまいます。冷静に考えると計画ができて承認されても企業の状況は全く変わってなく、立ち直れるかはその計画を実行して成果を得ることが必要になってきます。
計画の策定はスタートであり、そこから長い、場合によっては苦しい「経営改善」の実行が続いていきます。
改善計画の対策自体は当たり前ですが、当たり前のことを当たり前にできるかが成果が得られるかのポイントです。
今までの経験から、当たり前のことを当たり前に出来る経営者の共通点は経営者本人の自覚と素直さではないかと思います。
計画が出来て金融機関の支援や同意が得られて安心する経営者は、手段が目的となり十分な経営改善が進んでいないように感じます。「喉元過ぎればなんとやら」の状況です。
一方で、経営改善の必要性を自覚して、今までの経営ではダメだと素直さを持っている経営者ほど、私たち支援者に伴走支援を依頼してきます。結果として計画通りに成果を出していくことが出来るように感じます。
当事務所では経営改善計画策定に関する様々なご支援をしておりますのでお気軽にご相談ください。
安部中小企業診断士事務所は、“100年続く企業”を応援しています。
[2026.7.31]
カテゴリー:経営
中小企業にとって、資金繰りは会社の「血液」に例えられるほど重要な生命線です。どれほど素晴
らしい製品やサービスを持ち、売上が好調であっても、手元の現金(キャッシュ)が枯渇すれば
会社は立ち行かなくなります。今回のブログでは、資金繰りの重要性と、安定させるための具体的
なポイントを整理して解説します。
1. なぜ資金繰りが重要なのか?
最大の理由は「黒字倒産」を防ぐためです。会社の帳簿上は利益が出ていても、手元に現金がなけ
れば、仕入先への支払いや従業員の給与、税金の納付ができなくなり、結果として倒産してしま
います。
利益(損益)と資金繰り(キャッシュ)は、全く異なる概念です。
借入金の返済や税金の支払いは、利益ではなく「現金」で行う必要があるため、常に手元のキャッシュを
確保しておく必要があります。
2. 資金繰りを改善・安定させる5つのポイント
ポイント1:資金繰り表の作成と徹底した現状把握
ポイント2:入出金サイクルの最適化(入金は早く、支払いは遅く)
ポイント3:適正な在庫管理と不良在庫の処分
ポイント4:金融機関との良好な関係構築と資金調達の多様化
ポイント5:固定費の見直しと削減
資金繰り管理は、経営者の最も重要な仕事の一つです。早め早めの対策が会社の危機を救い、持
続的な成長を可能にします。まずは現状の正確な把握と、資金繰り表の作成から始めることをお
勧めいたします。
当事務所では資金繰りに関する様々なご支援をしておりますのでお気軽にご相談ください。
安部中小企業診断士事務所は、“100年続く企業”を応援しています。
[2026.6.26]
カテゴリー:国の施策
最近、事務所へ外国人経営者から「経営・管理」ビザ更新審査のための企業評価書(経営改善の見通しについての評価書)の作成依頼が急増しています。これは2025年10月に更新審査が厳格化されたためです。
日本の出入国在留管理行政において、外国人起業家および経営者を受け入れるための在留資格「経営・管理」は、日本経済への直接投資の促進と新たな雇用創出の要として機能してきました。しかし、2025年(令和7年)10月16日に施行された上陸基準省令等の抜本的改正により、同在留資格の取得、維持、および更新にかかる要件はかつてない水準へと引き上げられ、制度の歴史的転換点を迎えました。
このパラダイムシフトの根底にあるのは、名目的なペーパーカンパニーの設立や、実体を伴わない極小規模事業を通じた事実上の「就労目的・在留目的の入国」を徹底的に排除し、真に日本経済に付加価値をもたらす資本力と実現可能性を備えた持続的な事業体のみを受け入れるという政策的意図です。
在留期間の更新審査である、過去の経営実績に基づく「事業の継続性(安定性)」と「公的義務の履行状況」が極めて冷徹な視点で審査されるようになりました。
企業経営において、特に創業初期には先行投資の負担や市場開拓の遅れにより、単年度の決算が赤字に陥ることは経済活動の性質上避けられない場合がある。出入国在留管理庁も「1期目の赤字=即不許可」という硬直的な運用はしておらず、貸借対照表上の純資産の状況を含めて総合的に事業継続性を判断する基準を設けています。しかし、財務状況が一定の危険水域に達した場合、自社内での事業計画の策定にとどまらず、第三者である国家資格者(中小企業診断士等)が作成した「経営改善の見通しについての評価書」の提出が義務付けられています。
2025年10月の「経営・管理」ビザ上陸基準省令改正、ならびにスタートアップビザの全国展開は、日本の外国人起業家受け入れ政策における明確な「質への転換」を意味しています。「資本金3,000万円以上」「常勤職員1名以上の雇用」という極めて高い参入障壁は、日本国内で実質的な経済波及効果と雇用を生み出す覚悟と能力を持ったアントレプレナーのみを選別するという国家の強い意志の表れです。
この高度化された制度を適正に運用するため、出入国在留管理庁は審査の一部を外部化し、新規参入時の「専門家の確認書」と、財務悪化企業に対する「改善見通し評価書」という二重のゲートキーパー機能を国家資格者(中小企業診断士・公認会計士・税理士)に委ねました。これにより、入管法務手続きを専門とする「行政書士」と、事業の財務的妥当性を分析・担保する「経営の専門家」の双方が強固に連携する新たなエコシステムが構築されつつあります。
既存の「経営・管理」ビザ保有者にとっては、2028年10月までの3年間の経過措置は単なるモラトリアムではなく、事業規模を劇的に拡張するための猶予期間であります。外国人経営者は、租税および社会保険の完全なコンプライアンスを前提としつつ、専門家の支援を仰ぎながら、資本増強と雇用創出に向けた具体的なトランジション・プランを実行に移さなければならなくなりました。
当事務所では外国人経営者の事業計画策定や企業評価書作成のご支援もしておりますのでお気軽にご相談ください。
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